原点は、タッパーに詰めた白ごはん。"身軽"を愛するアウトドアラバーの旅の原点
19 August 2021

両親は旅の達人。その背中を見て育った彼女が、旅に出るのは必然だった。西へ東へ、何時間でも構わず車を走らせる。大好きな人と自然に、出会うため。
CONCEPT
『小さな旅の記録~your solo trip~』<インタビュー連載>
"旅"をコンセプトに開発された「solo trip collection秋冬」のアイテム達を
記念して、新たなプロジェクトが始動。
otii®︎の理念に共感してくれた沢山のゲストに、
"旅"をテーマにお話を伺いました。
馴れ親しんだ日常から、ほんの少しだけ離れてみる。
たったそれだけで、そこには「小さな冒険」が溢れていました。
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うきさん |
原点は、タッパーに詰めた白ごはん。"身軽"を愛するアウトドアラバーの旅の原点
ーーーーアクティブで等身大のキャンプスタイルをインスタグラムで発信しているuki_ki_さん。インスタはとにかくキャンプ一色ですが、キャンプ歴はどれほどでしょうか?
いちばん古い記憶は……和歌山の有田川沿いにあるキャンプ場、川で泳いで、カヤックで遊んで、眠くなったら昼寝して、起きたら弟とふたりでひたすら西日でキラキラした水面で水切りをして……私は小学校1,2年生だったと思います。両親に聞くと私のキャプデビューは生後6ヶ月だそうで。あ、いや、「胎児のときにデビューしているよ」とも言っていました(笑)。
ーーーーご両親が筋金入りのキャンパーだったんですね。
キャンパーというか、旅することが日常茶飯事な家庭で育ちました。毎週のようにキャンピングカーでどこかしら出掛けていたので、「明日は旅行?やったー!」みたいなワクワク感を覚えたことがないほど、“日常”。夏休みに10日間かけて中国地方を回ってキャンプをしたこともありましたが、より“身軽”にアクティビティを楽しむためにタッパーに自宅で炊いた白ごはんを入れて持って行っていました。そのくらい、どこへ行っても“日常”の延長でしたね。
ーーーいつも行き先はどうやって決めていたのでしょう。
基本的には、方角と天気です。
ーーー「ここでこれをやりたいから」とかではなく!?
もちろん、そういうこともありましたが、基本は何も決めず「今週末、北の方が晴れているからそっち方面に行こうか」「四国なら天気持ちそうだね」と。あとはノープランで、道すがらにカヤックを出せそうな川を発見したら、「いい川がある。行ってみよう」とか、道の駅を見かけたらその日のおかずになりそうな地元の野菜を買ったり。すべてのことが、その場で決まっていくことの方が多かったですね。
ーーーーすてきなご両親ですね。お仕事は何をされていたんですか?
塾を経営して先生をやっていました。先生だからといって「こうすべし!」「この体験からこれを感じ取ってほしい!」という一方的な教えはなく、家族と一緒にいる手段のひとつとして、自分たちの好きな「旅」をしている、という雰囲気でしたね。
ーーーー普通は目的を定めてしまいがちですよね。私なんかは、ディズニーランドに行こうとか、次はあそこの遊園地に行こうとか、、そんな記憶ばかりです。
ああ、そもそも遊園地系は家族では行ったことがないかも。あ、淡路島の「淡路ワールドパークONOKORO」には行きました。旅の途中で地図を見ながら、「ここ、良さそうやなあ。明日はここ行こか」という流れで決まっていましたね(笑)。
ーーーーなんか一体感があって、楽しそうなご家族ですね。
父が行く場所をそのつど決めてくれる一方で、生まれつき目が悪くて運転ができないので、母が運転を担当していて。それぞれの不得意なところを補い合って旅をしていました。
自分で運転するようになって「母はこんなに大変なことを何気なしにしていたのか」と実感し、両親の仲の良さを再確認しましたね。
ーーーーuki_ki_家の旅で、欠かせないグッズはありましたか?
それはもう、「マップル」の道路地図ですね。おしゃれでかっこいい最新のグッズ!みたいなものではなく(笑)。その頃は今のように携帯のマップやSNSが発達していなくて、紙の地図くらいしか情報がなかったので、地図だけが頼りでした。地図を見て「釣りができそうな海辺」だと思い行ってみると、絶壁で釣りをするような場所ではなかったり、雨が降り始めて「今日はキャンピングカーで大富豪だ!」となったり。
ただただ、自宅ではない場所で、気ままな日常を送っている感覚でした。
ーーーーそういった幼少期が、現在のuki_ki_の下地になっているのかと思いますが、学生時代も家族でやっていたような旅をしていたのでしょうか?
中高生の時は部活動が忙しく、あまりそういった旅はたくさんできませんでしたが、大学時代はキャンプサークルに入っていました。1年生のとき、サークルのビラ配りの中からキャンプサークルを見つけ「これだ!」と。そこは、子どものためのキャンプ企画を立て、引率するサークルでした。家が塾で子どもに慣れていたし、親との旅を通じて学んだことを活かせるのではと思ったんです。
そこで、子どもたちに特によく話をしたのは、アウトドアの危険性です。自然が、とても楽しくて豊かな一方で、いかに命に関わる危険もはらんでいるか、と。
ーーーー幼少期、命の危機に瀕したことがありそうですね……。
熱い、寒い、痛い……を、ダイレクトに身を持って経験してきました(笑)。いちばん記憶に残っているのは、小学2年生のとき、例によってキャンピングカーでの、冬の旅。スキー場に行ったときのことです。
親はキャンピングカーで寝ていて、私はひとりでスキーを楽しんでいました。リフトから降り、滑っていたとき、予兆もなく変わるんですよね、雪山の天候って。ホワイトアウトに遭遇したんです。
ーーーー吹雪や霧、雲により、視界一面が真っ白に覆われる現象ですね。こわすぎる。
「あ、これは死ぬな。ヤバいな」と思いました。でもパニックになっても意味がないので、バーっと対策を考えたんですよ。
ーーーー小学2年生ですよね?!
いずれ止むからここで大人を待ったほうがいいのか。でもひどくなるかもしれない。動いたほうがいいのか。自分がいま、できることは?
……結局、コース横のロープを伝いながら、下に降りることを選択しました。降りると下の方はホワイトアウトが起きていなくて、ほっとしましたね。
ーーーーご両親はさぞ心配したんじゃないですか!?
どうだったかなあ、私がそうなっていたこと、知らないんじゃないかな(笑)。
夏の川も危険ですよね。私がとてもわんぱくな性格だったのもあって、カヤックに乗り込むときや、飛び込みをするとき、「ノリで行っちゃダメだ!」というのは、かなり口酸っぱく言われましたね。
ーーーー学生時代のキャンプサークルを経て、いまのキャンプスタイルにたどり着いたのは?
社会人になってからです。ずっと全国を旅することが日常だったし、家にギアは揃っていたので、ごく自然にキャンプに行くようになりました。
今も、いろんなことが両親の旅のスタイルと同じなんです。使える日常道具を持ってゆき、道の駅で食材を買い。場所決めは、たとえば「佐賀のバルーンフェスタに行く」という目的をひとつ作って、じゃあ九州方面だ、とか、「高知の柏島に行ってみたい」ならば、じゃあ四国を回ろう、とか。キャンプ場は、空いていそうなところを道中に予約することが多いです。
ーーーー予期せぬことがいろいろと起こりそうですね。
そもそも計画していないので、“予期せぬこと”は起こらないといいますか、嬉しいハプニングならいつも遭っていますよ。バルーンフェスタに行ったとき、強風でテントが飛ばされそうになっていると、隣のご家族が助けてくれたんです。「どこから来たの?」「この魚食べてみて!」と、とてもフレンドリーにしてくださり。以来インスタで繋がり、毎年「今年はいつ来るの?」と連絡をもらい同じ場所で会っています。
ーーーーインスタグラムの、人と人を繋ぐ力は絶大ですね。キャンプ初心者の方からの相談DMが多く届きそうですね。
いただきますね。「何を買えばいいですか」とか。個別の困りごとがあれば、それぞれのニーズに合わせて返信しています。
個人的には、急にすべてのギアを揃えるのはムリがあるので、家にあるもので代用することをおすすめしたいです。テントは代用できないにしても、調理はガスコンロで、シュラフ代わりに毛布を、収納ボックスはタンスに眠っている衣装ケースが使えます。
ーーーーいまキャンプで使っているこだわりのギアはありますか?
こだわりがないのがこだわりで、ギアを語ることにあまり興味がなくて。でも、その時々やスタイルに合わせておすすめのギアはたくさんありますよ。
ただ、私のキャンプはやっぱり“日常の延長”なので、グッズよりも、その土地土地で暮らし、地域の人や自然と共鳴することに興味があるんです。
ーーーーそこに、uki_ki_さんの「旅」の意義があるのですね。
ちょっとかっこいい言い方をすると(笑)、私にとって「旅」は、生きることそのものだなと思います。だから、旅がない日常は想像がつきません。ただ、「移動する」ことがイコール旅というわけでもなく、「心の移動」も立派な「旅」ですよね。本を読むことも、インスタで繋がりが広がることも、新しい挑戦もそう。そう考えると、「旅」って、広義で、とっても自由ですね。