「佐渡島って印象薄くない?」を一蹴。地元民が撮る絶景の新潟
15 August 2021

一念発起して保育士からカメラマンへ。が、時はコロナ禍。あわやニート沼から浮上したのは、持ち前の明るさと、魅力発掘力が開花したからだった。
CONCEPT
『小さな旅の記録~your solo trip~』<インタビュー連載>
"旅"をコンセプトに開発された「solo trip collection秋冬」のアイテム達を
記念して、新たなプロジェクトが始動。
otii®︎の理念に共感してくれた沢山のゲストに、
"旅"をテーマにお話を伺いました。
馴れ親しんだ日常から、ほんの少しだけ離れてみる。
たったそれだけで、そこには「小さな冒険」が溢れていました。
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永島さん |
「佐渡島って印象薄くない?」を一蹴。地元民が撮る絶景の新潟
ーーーー新潟県を中心にフリーランスカメラマンとして活動している、永島さん。爽快感溢れるお写真が魅力的ですが、撮りはじめたのはいつ頃からですか?
社会人1年目の冬、地元の新潟で保育士をしていた20歳の頃です。おしゃれなアクセサリー感覚で、「カメラを首から下げたい!」と思ったのと、高校時代の先輩が撮影に連れていってくれたのがきっかけでした。
ーーーーどこへ撮りに行かれたのでしょう。
長岡造形大学です。ガラス張りの外装や螺旋階段など建築デザインがかっこよすぎて、初心者でも見栄えのする写真が撮れてしまうロケーションなんです。
そこでわたしがルミックスGF7のズームレンズで撮っていた一方で、先輩のモニターを覗いてみたら衝撃を受けまして。先輩は単焦点レンズを使っていて、このとき初めて、レンズの種類がたくさんあることと、レンズが違うだけでこんなにも写り方が変わるのかということを知りました。
それから旅先にカメラを持っていっては撮るようになりました。その過程で、「友達と一緒に行くのに、なぜ自分は写れないんだ?悔しい!わたしも一緒に思い出を残したい!」となり(笑)、そこで初めてセルフタイマーの存在を知ったんですよ(笑)。もうね、カメラのいろんなことを知らなくて宝の持ち腐れ状態で、使い方を一歩ずつ知っていきました。
ーーーー少しずつ機能を知り、腕を磨いていったのですね。
それが6年ほど前ですね。当時は今よりもカメラ人口が少なく、わたしの上手ではない写真をインスタにアップしていたら、あるとき「あなたの写真を見ました。ぜひ会いたい」と連絡が来たんです。まさかそれ以降、人生ががらりと変わるとは思いもよりませんでした。
ーーーー劇的な出会いがあったのですね。
そうなんです。その彼は大阪の人で、「写真を撮るイベントを開催するから、一緒にやらないか」と誘われ、目立ちたいタイプなので(笑)二つ返事でOKしました。その彼と一緒にカメラを持って私の地元を歩いていると、「魅力的な場所だよね」と言いながら撮るので、不思議でした。わたしにとっては当たり前の光景を、“魅力的”に捉える人がいるのか、と。視点を変えれば当たり前の光景に潜んだ魅力が見えることと、カメラの使い方を基礎からしっかり教えてもらい、カメラに対する向き合い方が少しずつ変わっていきました。
それから、イベントに参加していくなかで、いろんなお誘いをいただくようになりました。カメラマンとしても呼ばれるようになったんです。
ーーーー地元のアクティブな人脈が広がっていったんですね。
その人たちが本当にかっこよくって!普通なら、「何かやる」=「東京に行く」と考えてしまいがちじゃないですか。東京は最先端だから、漠然と「何か成せそう」と思っちゃうから。でも先輩たちは、「俺たちみたいな若者が、東京で『○○やります!』と言っても誰も見向きもしないけど、新潟のような、安定志向の職に就き休日は平和に友達とすごすーーという人達が多い場所なら、チャレンジするだけでみんなが注目してくれる」と、「だから新潟を拠点にする」のだと教えてくれたんです。
しかも、新潟でやるからには「地域のため」を徹底的に主軸にしていて。その背中を見て、身震いしましたね。わたしはこのままでいいのか?と。
ーーーーそのときは保育士を続け、カメラはいわゆる“趣味”だったと思いますが。
そうです。でも、ふんぎりがつきました。一般人でも、地元でこの心意気があるなら飛び抜けられるかもって。
それで母親に「保育士を辞めたい」と宣言したら、当然大反対。世代的にも「フリーランス?そんな不安定なことやめなさい!」だし、保育士の学校も出させてもらっていますし……。最終的には「30歳までにうまくいかなかったら就職するけど、いま、やりたい!」と無理やり押し切りました(笑)。
ーーーーお母様はなんと言っていましたか?
「もう知らないからね!」と(笑)。出ていけ、までは言わずとも、呆れ果てた感じでした。
そして次は職場ですが、園長に退職届を出したのは、1年と数ヶ月前。渋々OKをもらいました。それまでの「カメラ一本でやりたい。仕事辞めようかな、でもな……」という悶々とした思いがようやく晴れて、脳内は「こうやって稼いで〜〜」という希望に満ち溢れたシュミレーションでいっぱいだったんですが……。
ーーーー約1年前というと、1度目の緊急事態宣言、ステイホーム真っ只中の時期かと思います。
そうなんですよ。ニュースで東京の繁華街から人が消えているのを知り、徐々に新潟にもその雰囲気が漂い始めて、人と会おうものなら「なにしているの!?」と言われる世の中になってしまい、カメラマンなんてもってのほかじゃないですか。
それで4月の時点で、「いま無理に開業届を出しても、“自称カメラマン”のまま終わってしまうかもしれない。最悪、来月にでも保育士に戻ればいいじゃないか」「でも、あんなに大口叩いて辞めたのに、今さら戻れるわけないじゃん」と弱さや葛藤で気持ちがどん底に向けて落ち始め、3ヶ月間、開業届を出せずにいました。
一応、先輩のカフェを手伝わせてもらい、スマホ代くらいは給料をいただきましたが、ニートに近い状態でした。
ーーーーお母様の反応が気になります(笑)。
マジギレですよ。「あんたどうするの?このまま家にいるの?自分の娘がニートになったなんて、会社の人にも言えやしない!」と。普段は子どもを信じてくれる人なんですが、母親のあんなマジ顔、初めて見ました。
どん底でしたね。とにかく苦しかった。
そんななか時間だけはありあまっていたので、ずっとスマホをいじっていました。
当時はインスタのフォロワーさんが2千人いて、あるとき「ZOOMで交流しませんか」とDMをいただいたんです。暇だし、すぐ「やるやる!」となり、他のフォロワーさんも参加してZOOMグループができまして。すると苦しい胸の内を明かす場所ができ、気持ちが徐々に上向きになっていったんです。そこで繋がった方たちとはかなり仲良くなり、「今度みんなでどこかにでかけたいね」と、実際に会えたのはその年の11月頃でした。
ーーーー会った場所はどちらでしょうか。
みんなわたしが撮った新潟の写真を見て、「新潟に行きたい」と言ってくれ、来てくれました。ならばわたしも「次はみんなの地元に行きたい」と、新潟の次は愛知県の日間賀島で会うことになりました。「新潟、いいね」と言ってくれたぶん、わたしも「あなたの地元、いいね」と言いたくなったんです。
その頃からですね、いまの撮影コンセプトに定まっていったのは。「それぞれの“地元”のいいところを見つけて、撮る」んだ、って。
ーーーーインスタには「島旅が大好き」と書かれていますが、新潟は佐渡島が代表的な島ですよね。
そうですが、実は県民は、佐渡島に思い入れがないんです(笑)。ほとんどの人が修学旅行で行き、何の印象も残らずに帰ってくる場所なんですよ。「あー……トキ見たなあ」「金山で、砂金を取った……かなあ」みたいな。わたしもそのひとりで、でも、大人になってカメラを持って行ったら、気づいたんです、「あれ?こんなに魅力的な島だっけ?」と。観光スポットではない場所こそすごくない?と。そうやって視点を変えて見えた素晴らしい佐渡島の写真を発信したら、みんなもわたしと同じ感想でした、「佐渡島にこんなところあったの⁉︎ わたしが知ってる佐渡島じゃない!」。
ーーーー佐渡島のお気に入りスポットを教えてください。
いっぱいあります!絞るなら、まずは大野亀。周りになにもないなかに、でっかい山、無骨な岩、その先に広がる青ーい海。5月下旬には足元に黄色い花が咲き、その彩りに胸が打たれます。
あとは、背合のバス停。日本海に面したバス停で、ロケーションが最高なんです!空、海、バス停……って、スーパーコンボじゃないですか!?あとは最近見つけた、沢崎鼻灯台、の、ふもと。みなさん灯台を観にいきますが、灯台の横から海が面した崖まで下れる場所を発見しまして。そこで撮ると、海に溶け込んだ絶景写真が撮れるんです。
そんな写真をインスタにあげると、「今度行くね」とか「行ってきたよ」の連絡をくれるようになり、魅力を伝えられたんだなあと、ほんとうに嬉しくなっちゃいます。
ーーーー佐渡島の北部にある小さな島、粟島はいかがですか?
粟島は、なんでもない道こそが絶景です!自転車で島を一周していたとき、漕ぎ疲れて自転車を降りてふと見た道の先が、とびきりの絶景。人工的なものがないので、どこを切り取っても美しいんでしょうね。
ーーーー永島さんの「これ、いい!」を聞いていると、誰もが島旅に出たくなるかと思います。永島さんは”旅”をどう捉えていますか?
「行こう!」と思っていくのが“旅”だと思います。新しい発見をしに、誰かに会うために……旅って、行った先々で必ず、日常では得られないものを得ることができるなあと。
ーーーーそんな旅のスタンスなら、近場や自分の地元でも成し得そうですね。
そうですね。通勤ルートから少し外れて写真を撮りたくなったら、「今日は“写真旅”をしながら会社に向かおう」と思うだけで旅ですね。うん、そうそう、「○○旅」って言うだけで特別感がありますね。「3人でおでかけ」を「3人旅」というだけで、たったそれだけで、何か見つけられそうなわくわく感が生まれる。きっと周りにあふれるものすべて、視点を変えたら、特別で、わくわくするものなんですよね。
[ GUEST ]
NAME : nagashima miki
INSTAGRAM :@naaaagashi
JOB: photographer
[ INTERVIEWER / WRITER ]
NAME:有山千春
AREA : tokyo
JOB : free lance writer
PROFILE:制作会社、出版社を経て2011年よりフリー。主に週刊誌、月刊誌、書籍構成。行くなら最果てと、猥雑な小路。