モロッコのティーテーブルをハスラーに積んで。愛しの遊牧民ライフ
14 August 2021

サファリで見たコットンテントのピクニックを追い求め、日々をロールプレイング。手に入れたのは、わたしだけの秘密基地。
CONCEPT
『小さな旅の記録~your solo trip~』<インタビュー連載>
"旅"をコンセプトに開発された「solo trip collection秋冬」のアイテム達を
記念して、新たなプロジェクトが始動。
otii®︎の理念に共感してくれた沢山のゲストに、
"旅"をテーマにお話を伺いました。
馴れ親しんだ日常から、ほんの少しだけ離れてみる。
たったそれだけで、そこには「小さな冒険」が溢れていました。
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オリバーさん |
モロッコのティーテーブルをハスラーに積んで。愛しの遊牧民ライフ
ーーーーいわゆるキャンプ……とは少し趣の違う、“移動式別荘”でのライフスタイルを発信し、多くのファンを有しているオリバーさん。いまのスタイルに至ったきっかけはどんなものでしたか?
小さい頃に「野生のエルザ」という実在のライオンを記録したノンフィクション本を読んでから、ずっとアフリカに憧れていたんです。「アフリカの風、温度、湿度、匂いを体感したい!」って。
ようやく20数年前、ケニアに行くタイミングができたんです。するとサファリの途中で、白いテントでグランピングしている外国人グループに遭遇しました。
ーーーー当時の日本人とは縁遠いその光景を見て、どう思いましたか?
「野生のライオンが出る場所で、なぜ木の下にコットンのテントを張ってピクニックをしているんだろう!?しかもシェフまでいるし!」と、驚き半分不思議半分、そして大半は「やってみたい!」という憧れで、その光景が帰国してからもずっと焼き付いて離れませんでした。
ーーーー海外旅行がお好きなんですね。いままでどんな場所に行きましたか?
トルコにモロッコ、セドナ、インド、タイ、パリ、ハワイ、バンクーバー、メキシコ……約20カ国です。
ーーーーそれぞれの場所に共通点はありますか?
圧倒的に日本とは文化が違う、です。たとえばイスラム教の寺院とか、日本にいたら見ることができない造形や装飾を見たり、言語を聞くと、好奇心が刺激されて楽しいんです。
ーーーー幼少期から、そうした興味の片鱗はあったんでしょうか?
出身は横浜のとある団地なんですが、敷地内に生えていた大きな木の上に、粗大ごみ置き場に捨ててあったベッドのマットレスを運び、“木の上の秘密基地”を作ったりしていました。そこで友達と、隣接するゴルフ場の緑の木々をただただ眺めていました(笑)。
ーーーーそうした好奇心の種が、大人になり“海外旅行”として芽吹いたんですね。これまで海外で経験した、刺激的な思い出はありますか?
サハラ砂漠でのキャンプです。
マラケシュから車で10時間かけて砂漠の入り口まで。そこからベルベル族の引くラクダで夕日が映える砂漠を移動すること2時間。
キャンプ地に到着するとすぐに最高においしいタジン鍋で舌鼓。
その後は伝統的な部族のダンスを一緒に踊ったり、漆黒の砂漠を走り回ったり。
疲れたら、ラグの上に寝っ転がって180度満点の星空と天の川を見上げながら眠りつく。そんな体験ができたことです。
ーーーー最初の頃のひとり海外は、どんな気落ちでその土地を歩いていたんですか?。
当時はグーグルマップもないので、まずは「地球の歩き方」を見ながら街を歩いて。地図を見ていろいろと調べること自体が好きなので、ロールプレイングゲーム感覚で楽しんでいましたね。まず目的地をひとつ定めて、「この路線バスに乗って、メトロに乗って……、あった、見つけた!」って。
車で目的地に行こうとしたときは、道に迷ってしまい、「大型トラックの後ろをついていけば高速に乗るばず……よし!乗った!やっぱりね!」とか。
ーーーー海外で車を運転して、そんなに大胆になれるなんて(笑)。ハプニングもロールプレイングの一貫にしてしまおう、と。
困ったら片言でも誰かに聞けば教えてくれるだろう、と思うし、ひとりだからこそ、これまでひとの優しさに触れてきました。
ーーーーそうした海外旅行から、次第に日本でのキャンプに移行していくわけですが、なにかタイミングがあったんでしょうか。
周囲にキャンプをやっているひともいなければ、道具を揃えるのも大変そうだし……そんなとき、2011年に東日本大震災があり、「テントは持っていてきっと役に立つ」と思いようやく購入しました。
2016年頃からキャンプ好きの友人と親しくなり、イベントの情報交換するようになってから、ちょこちょことキャンプイベントに参加するようになりました。
ーーーーキャンプもひとりで行くことが多かったのでしょうか?
そうですね。だからこそ、出会いがあります。たとえば、後から合流する友人より先にひとりで「GOOUT CAMP」に参加したとき。テントを一人で張るのが初めての日で、キャンプ場まで車を走らせていたら目の前に県外ナンバーが走っていたので、「同じ目的地かも」と思いついていきました。
キャンプ場に着き、「どこにテントを張っていいのかすらわからない初心者だったので、ずっと後ろをついていってすみません」と話しかけたら、「僕煽られてると思ったよ」って(笑)。
自己紹介をすると「ちょっと待って、もしかして、この人?」と聞かれたんです。当日朝ダウンロードしたアプリで「明日、GOOUTに行きます」という記事にコメントをつけてくれていたのが、そのひとだったんですよ。
ーーーーええー! すごい偶然!
その方とは今でも仲良くさせてもらっています。
ーーーー出会いのほかに、ひとりキャンプの醍醐味は?
行く場所も、行くタイミングも、ご飯も、なんたって自由!ですね。たとえば海でテントを張りたいとき、天気予報を見て「風が弱まっているのは今しかない。友だちを誘う時間もない」と、ひとりならささっと行きたい場所に行けます。
ーーーー現在はどのくらいの頻度でキャンプをしていますか?
最近はほぼ毎週です。今週はあの人から誘われて、来週はあの人と行って、一人でも行きたいし……とやっていたら、毎週になっちゃって。それに、新緑、桜、雪中と、四季も味わいたいから、1年中行くことになっちゃうんです。
ーーーーテントを張ってからのルーティンは?
テント内をどんなレイアウトにしたら居心地良くすごせるかを考えたり、太陽の角度によって変化する景色や、夕方と夜の間の“マジックアワー”を写真に撮ったり、焚き火をしたり。
ーーーーいつも持参している愛用品はありますか?
モロッコで購入したティーテーブルです。小さいので実用性というより、ランタンを置くなどテント内の雰囲気作りのレギュラーです。自分の家も、これまでの海外旅行で買い集めたお気入り品で溢れていますが、テントも同じ雰囲気にしたいんです。
ーーーーなるほど、だからこそオリバーさんが掲げる“移動式別荘”のフレーズが腑に落ちました。海外、そしてキャンプの経験を経て、オリバーさんにとって「旅」はどんなものですか?
感性のアップデート、でしょうか。あと、旅するたびに、自分のできることが上書きされていく感覚です。
「こんなことができるようになった」「あの人が言っていた、この言葉の意味がわかるようになった」「こんな考え方ができるようになった」
と。自分のキャパが拡張されているといいますか。
ーーーー「こんな考え方」とは、たとえばどんなことでしょうか?
“現実社会”で、「あの人がこうしてくれたらいいのに!」とイライラしていたところを、自分でできることが増えると、イライラせずに済むんです。そして、「これは私がやればいい」と、他人への依存が減り、ポジティブ発想への転換が早くなりました。
ただ、最近まで旅を詰め込みすぎてしまって、今は少しだけお休み中(笑)。自分がどうしたらリラックス出来るか次の楽しみ方をチャレンジ中です。
[ GUEST ]
NAME : オリバー
INSTAGRAM : @oliver_r13
[ INTERVIEWER / WRITER ]
NAME:有山千春
AREA : TOKYO
JOB : FREELANCE WRITER
PROFILE:制作会社、出版社を経て2011年よりフリー。主に週刊誌、月刊誌、書籍構成。行くなら最果てと、猥雑な小路。