病気、カメラ、大好きな小説。全ての出会いが今につながる。
16 August 2021

その場の景色だけでなく、空気や温度までを切り取ったような素敵な写真をSNSに更新している花澤さん。写真への探究心やインスピレーションは、花澤さんが歩んできた人生が大きく関係しているようです。
CONCEPT
『小さな旅の記録~your solo trip~』<インタビュー連載>
"旅"をコンセプトに開発された「solo trip collection秋冬」のアイテム達を
記念して、新たなプロジェクトが始動。
otii®︎の理念に共感してくれた沢山のゲストに、
"旅"をテーマにお話を伺いました。
馴れ親しんだ日常から、ほんの少しだけ離れてみる。
たったそれだけで、そこには「小さな冒険」が溢れていました。
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花澤さん |
病気、カメラ、大好きな小説。全ての出会いが今につながる。
ーーーーリアルな色彩と光、陰の使い方が印象的なお写真をSNSで発信されている花澤さん。現在はお仕事としてもカメラをですが、カメラを本格的に始めたのはいつごろなのでしょうか?
ちゃんとカメラを買ったのは高校一年生の時ですね。
きっかけは、、病気の発覚です。小さい頃から体調を崩しやすいほうだったんですが、学生時代に難病だということが発覚しました。
今は投薬で症状が落ち着いていますが、病気が進行すると失明する可能性があると医師に告げられてから、今見えている世界と当たり前の日常のありがたみや大切さを深く考えるようになったんです。
当たり前だけど自分にとって特別なものを、写真という形で残したいと思ったのがきっかけです。
ーーーーだから、花澤さんのお写真は日常を切り取ったようなものが多いんですね。カメラはスマホなどと違って使い方も難しいと思いますが、どこかで勉強されたのでしょうか?
自分が撮る写真も、他の方の写真をみる時も、身近なものに心惹かれることが多いです。
学校などには通っておらず、全て独学です。最初は使い方も全然わからないのに、説明書を見るのが苦手で、とにかくいじって撮っての繰り返しでいろんなことを覚えていきました。
メインで使っているフィルムカメラは露出計が壊れているんですが、今ではその場所の明るさを見て自分で絞りを調整して写真が撮れるようになりました。何事も経験ですね。
ーーーー大学も写真は専攻されていないと伺いましたが、大学卒業後はすぐに写真の仕事をされていたのでしょうか?
大学で社会福祉士の資格を取ったので、卒業後はメディカルソーシャルワーカーとして働いていました。病を克服された方の社会復帰をお手伝いする仕事です。
普通に生活していたら触れることのない環境だと思うので、自分にとって良い経験になりました。自分の境遇的にも、「人」や「人生」について考えることは多いかもしれません。
ーーーー花澤さん自身の人生が写真にも反映されているんですね。
もともと「風景」写真が好きだったのですが、この仕事を通して「人」を残したい、と思うようにもなりましたね。
病気も含めて、今までの経験が一つでも欠けていたら今に至っていないような気がします。シャッターを切ることで、この一瞬を忘れられないものにしたいですし、現像したフィルムを眺めながらその時の記憶に入り込んでいく時間も好きです。
ーーーー写真は花澤さんにとって目でありタイムマシーンのようなものなんですね。花澤さんは写真以外のご趣味はあるのでしょうか?
写真以外だと、本や小説が好きです。ひとりで過ごす休日は、カフェに行って小説を読むことが多いですね。
小説も写真に似たところがあるなと感じていて、読み進めていくと、どんどんその世界に入り込んでいく。その世界を旅しているような感じがします。小説から、写真のインスピレーションを受けることも多いです。
ーーーーなるほど。記憶や、想像の中にある”旅”ですね。
花澤さんのおすすめの小説はありますか?
一番好きな小説は三秋縋さんの「三日間の幸福」です。本を選ぶ時、私は題名や表紙で選ぶことが多いのですが、この本は表紙が私の住んでいる場所にものすごく似ていたんです。
全然知らない作家さんだったのですが、思わず手に取って読み始めたら、その場の風景や登場人物の感情が頭に浮かぶような三秋さんの文章に惚れてしまいました。
ーーーー本の選び方が面白いですね。事前に調べたり、友人の勧めでは選ばないんですか?
そういうこともありますが、基本は本屋さんに出向いて、そこで表紙やPOPを見ながら決めます。
三秋さんの作品も、表紙がその写真じゃなかったら手にとっていないと思います。
ーーーー一期一会の出会いという感じで、選び方も旅っぽいですね。
そうですね。三秋さんの小説を読むと、自分自身も感情や空気感などを想像できるような写真が撮れたら良いなといつも思います。私が写真を撮る上でも、一番影響を受けている人かもしれません。
ーーーー言葉と写真、表現方法は違いますが、似た部分もありますね。
本や小説は私にいろいろなことを教えてくれます。遠くに行かなくても本を開けば行ったことのない場所や見たことない景色に出会えるんです。本は、私の小さな世界を広げ、学びを与えてくれる大切な旅の道具です。