走り続けた先には、なにもないけど四季があった。
20 August 2021

まったく無縁だったバイクに一目惚れしてから、人生がカラフルに。桜色、青緑、黄金色……各地の季節を楽しむ、女子ライダーの彩りバイク旅。
CONCEPT
『小さな旅の記録~your solo trip~』<インタビュー連載>
"旅"をコンセプトに開発された「solo trip collection秋冬」のアイテム達を
記念して、新たなプロジェクトが始動。
otii®︎の理念に共感してくれた沢山のゲストに、
"旅"をテーマにお話を伺いました。
馴れ親しんだ日常から、ほんの少しだけ離れてみる。
たったそれだけで、そこには「小さな冒険」が溢れていました。
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yuuriさん |
走り続けた先には、なにもないけど四季があった。
ーーーー日本らしい風景と、ポジティブな女子パワーが溶け合うバイク旅を発信している、yuuriさん。バイクと出会ったきっかけを教えてください。
3年ほど前、大阪・心斎橋の古着屋さんの前を通ったときのことです。店頭に置いてあったバイクに、一目で恋に落ちたんです。ほんとうに、一目惚れ。「これはなんていうバイクだろう!?」ってすぐに調べて、カワサキのエストレヤだとわかると、次の休みにバイク屋さんに行きました。中古で60万円くらいでしたが、買う気しかなかった。
「買うので、取っておいてください!」
「免許はあるんですか?」
「持ってないから、今から取りに行きます!」
「い、今から!?……じゃあ、だいぶ時間がかかりますね」
って、バイク屋さんは引き気味でした(笑)。
ーーーーそれまで、バイクへの興味は?
全っ然なかったんです。周りにも乗っている人はいなかった。ほんとうに急でした。
それから2ヶ月で免許を取得して、すぐにお迎えに行きました。そのままぷらっとツーリングして、待ち焦がれた日を満喫しました。家までの道すがら、「今度はあそこに行って、それから……」って、イメージしながら走りましたね。
お迎えするまでの2ヶ月間、バイクで行きたい場所を調べまくって、グーグルマップにフラグをたくさんたてたんです。いま数えると……401箇所ありますね(笑)。だって、わくわくが止まらなかったんですもん。仕事中も、家でも、ずーっと調べていたんです。
それで、とりあえずバイクの写真を撮ってインスタを始めてみたら、横のつながりが出来始め、ライダー友達が増え、周りの影響ですぐに大型免許取得を視野に入れるようになりました。いまはカワサキW800 2020モデルに乗っています。
ーーーーインスタではどうやって仲間が増えていったのでしょうか。
最初は「#バイク女子」というハッシュタグをつけている方たちのなかで、かわいい・かっこいい女性をフォローしまくり、フォロー返ししてくださり、を繰り返すなかで、「今度、一緒に走りましょう」「女子ツーリングをやるので、来ませんか?」などのお誘いコメントをくださった方がいて、広がっていきました。
ーーーーグループツーリングの醍醐味を教えてください。
ヘルメットの中で、みんんなでインカムで会話するのがとにかく楽しいですね!恋バナするときもあるし(笑)、すれ違うひとを横目に「いまのバイク、かっこよかったね」と言い合ったり、「桜が咲いてる!」とか景色の素晴らしさに共感し合ったり。インカムがあるのとないのでは、楽しさが全然違うように思います。
ーーーーソロでも走りますか?
そうですね。しかも、「楽しかった旅」でまっさきに思い浮かぶのはソロです。紅葉が始まりかけていた時期、岐阜県にソロツーリングに行ったときのこと、いまでも覚えています。せせらぎ街道を走っていると、壮大な景色に囲まれて、わたし、ヘルメットの中で思わず「生きててよかった」と口に出して言っていたんですよ。「こんな景色が見られるなんて、バイクに乗っていてよかった。生きていて、よかった」って、気づくと5回くらい言っていました。あれは幸せだったなあ。
友達から「行ったほうがいいよ」とオススメさせて行ったんですが、実際は予想を超える感動がありました。
ーーーー思わず言葉が漏れてしまうほどだったのですね。そのときは日帰りですか?泊まりでしょうか?
キャンプツーリングをしようと思って、バイクの後ろにテントを積んで走りました。
というのも、わたしは前職で業務の一環としてキャンプ場の管理をしてたんで、テントを張りは出来るんですよ。テントを持参してのキャンプツーリングが趣味になったのは、そんな理由です。
ーーーーキャンプギアの積載は大変ですよね。
そうなんですよ。最初の頃はうまくできませんでした。いびつな形で積み、走行中にミラーで後ろの荷物を確認すると、どちらかに傾いていて不安になって降りて積み直して……を、到着までに何度も繰返したり。ずーっと不安で、気が気じゃないんですよ。ただでさえ、キャンプ場はカーブだらけの山道を通らなきゃたどりつけませんし。
試行錯誤の末に、徐々に「土台にする大きいバッグには、荷物をパンパンに詰めよう」「ネットは二重にしよう」などのコツがわかってきました。
それでようやく慣れてきた頃、初めてバイク旅でソロキャンプを試みたのが、岐阜の旅でした。
泊まったのは、近くに平湯温泉がある平湯キャンプ場というところでした。わたしはいつも、「バイクが乗り入れられて、安くて、近くに温泉がある」というポイントをクリアしているキャンプ場を選んでいます。
ーーーー温泉はいかがでしたか?
めっっっちゃよかったです!また行きたいんですが、関西圏から岐阜って、時間がたっぷりないと行きづらい場所なんですよね。当時は転職前の長期休暇で、足を伸ばすことができたんです。
ーーーー長期休暇で、ほかにはどこかへ行かれましたか?
岐阜のほかには、四国、あとはほぼ毎日、関西圏を開拓しました。早朝に出て、夜遅くに帰ってきたり。単身赴任の家族が住んでいる久米島にも行き、残念ながらレンタルバイクがなかったので家族の原付きを借りて、島中を走り回りました。
決めていたんですよね、1ヶ月間、自分とバイクのために時間を使おうって。人生の夏休みでした。自由ってほんとうにいいものですよね(笑)。
次に長期休暇があるなら、北海道旅を狙っています!
ーーーーさきほど関西を開拓されたとうかがいましたが、お好きな場所はどちらでしょうか。
「こんな場所があったのか!」というところばかりでしたね。いままで車で行ったことがあった場所でも、それは単なる移動の過程で、バイクで行くとまったく違っていて。車で何度も通ったことがある道なのに「こんなに素敵なカフェがあったなんて」って、再発見もあったり。そもそも車とバイクとでは、目的が違いますもんね。車は移動手段だけど、バイクは目的地はもちろん、そこに至るまでの過程がすでに楽しい。
バイクに乗って、初めてダムの魅力に気づきましたもん。グループで峠を走る途中でダムに寄ってカレーを食べるなんて、車なら絶対にやらなかったことです。
で、関西のおすすめですよね。兵庫県の丹波篠山です。ほんとうに何もない、みんながこぞって行くような場所ではありません。何もないけれど、昔ながらの田園風景がすごくきれいに映える場所なんです。季節が感じられるんですよね。春は小川の傍にきれいな桜が咲いて、夏は青い緑が豊かで、黒豆や栗が名産品なので秋は旬の狩りが楽しめます。1年中、いつ行っても充実しているんですよ。
ーーーー田園風景は、インスタグラムを拝見するとよく撮影していらっしゃいますね。
好きなんです。カメラはバイクに乗るようになってから本格的にハマりました。最初の頃は仲の良い友達が撮ってくれていたのを、構図や設定をマネして覚えてきました。
いまは、人とかぶらない構図を意識して撮るようにしています。地面スレスレに寝転んで撮ったり、キメキメよりも、バイクのとなりでタバコを吸っているとか、オフショットを狙うのが好きです。
ーーーーyuuriさんにとって、バイク旅の醍醐味は何ですか?
バイクは、いままでならば行くはずもない場所に連れていってくれますよね。さっき話した丹波篠山がまさにそれで。だからバイク旅って、なにもない場所の魅力や、知らない世界を知ることができる、つまり新しい自分を見つけることができるのが醍醐味なんじゃないかな。
[ GUEST ]
NAME : yuuri
INSTAGRAM :@w8est.yuu
[ INTERVIEWER / WRITER ]
NAME:有山千春
AREA : tokyo
JOB : free lance writer
PROFILE:制作会社、出版社を経て2011年よりフリー。主に週刊誌、月刊誌、書籍構成。行くなら最果てと、猥雑な小路。