見る視点・切り取る角度で日常を異世界に。
13 August 2021

幻想的でありながら瑞々しい色彩表現が印象的な写真で広く共感を集める岩倉しおりさん。「作品」と呼ぶにふさわしい一枚一枚の写真に秘められたこだわりとそのルーツについてお伺いしました。
CONCEPT
『小さな旅の記録~your solo trip~』<インタビュー連載>
"旅"をコンセプトに開発された「solo trip collection秋冬」のアイテム達を
記念して、新たなプロジェクトが始動。
otii®︎の理念に共感してくれた沢山のゲストに、
"旅"をテーマにお話を伺いました。
馴れ親しんだ日常から、ほんの少しだけ離れてみる。
たったそれだけで、そこには「小さな冒険」が溢れていました。
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香川県在住の写真家。日本の四季や生活をとらえたフィルムカメラの写真をSNSで発信している。作品はCDジャケットや小説の装丁写真に起用されるなど、多くの反響を呼んでいる。 |
見る視点・切り取る角度で日常を異世界に。
ーーーー岩倉さんのお写真からは「青」に対する強い想いが感じられます。昔から青色がお好きなのでしょうか?
今では「青」が好きだと自信をもって言えますが、昔からこういった作風ではありませんでした。写真を始めたきっかけは高校時代友人に誘われて入った写真部で、当時は今のように自然や風景を撮ることも少なく、人を撮ることが多かったです。
ーーーー現在の作風に至るまでの経緯には心境の変化などがあったのでしょうか?
当時は、何が撮りたいかわかってなかったような気がします。写真部の頃はモノクロのフィルムをおもに使っていて、色彩の魅力にあまり気付いていなかったのかもしれません。
自然豊かな環境で育ったので、写真を撮り始めた頃はこの環境を当たり前だと思っていました。
でも、SNSで地元の写真などを公開するようになって、想像以上の反響をいただいて・・・。周りの方々に、地元の魅力に気づかせてもらった感じです。
ーーーー現在インスタグラムに更新されているお写真はフィルムカメラが中心のようですが、デジタルカメラも使われるのですね。
その時の状況に応じてフィルムカメラ、スマホ、デジタルカメラを併用しています。でもやっぱり一番好きなのは馴染みのあるフィルムカメラですね。デジタルカメラはフィルムカメラでは映らない暗い場所などで写真を撮りたい時に使うことが多いです。
ーーーーフィルムカメラがお好きということですが、機材などへのこだわりはあるのでしょうか?
カメラ本体はcontax ariaを、レンズはカールツァイス50mmを使っています。メインカメラもサブカメラもcontax ariaで、壊れてしまったら同じ物を買い替えています。予備も含めて、5台も同じものを買っています(笑)。
私は機材よりも撮る素材や光景を重視しているので、手に馴染むこのカメラから離れられないんです。
ーーーー撮る素材や光景へのこだわりは、岩倉さんのお写真からひしひしと感じられます。場所よりも、時間や空間といいますか。
私は物心ついた時から一人で何かを作ること、表現することが好きでした。絵を描くことが昔から好きだったので、それは今の作風にも繋がっています。
自分らしい表現の方法を探していた時に出会ったのが「写真」でした。今も、1枚の絵を完成させるイメージで写真を撮っています。
ーーーー絵描きを志していた岩倉さんにとって、「写真」と「絵」の違いは何だったのでしょうか?
絵というのは0から1をつくる創造のような気がしているんです。描くものは何でもよくて、描き手が表現したいものを自由に描くことができる。それに対して写真というのは、現実世界に既にあるものをどう切り取るか、ですよね。目の前にある一瞬の魅力を最大限に引き出す。1を100にしていくようなイメージです。その表現方法が自分にすごく合っていると感じています。
ーーーー岩倉さんのお写真はどこか「作品」と呼びたくなるものばかりだと感じていましたが、そういったルーツがあったのですね。
0から作れないからこそ、楽しいんです。視点や画角を変えるだけで、雨や木々の陰が星空に見えることもあります。私はこの世界をファインダー越しに見る時に、救われたような気分になることがあるんです。ああ、この世界はこんなに美しいんだと。
自分が見つけたその瞬間を、まるでその場所にいるように感じてもらえたらと思ってシャッターを切っています。
ーーーー普段の作品撮りは身近な場所で撮られているとお伺いしたのですが、遠方に写真を撮りに行ったりはされるのでしょうか?
写真を撮るために個人的に遠くに足を運ぶことは少ないですが、旅は好きです。場所によって生活様式や時間軸が異なるのはとても面白いですし、自分にとっての当たり前が当たり前でないことに気付かされます。自分の作品のインスピレーションにも繋がりますね。
ーーーー一旅は岩倉さんの作品にどのように作用しているのでしょうか?
いろんな場所に行ったからこそわかることは、「場所は関係ない」ということでしょうか。
私は基本的にどこにでもある光景が好きですし、どこであってもいい写真が撮れると思っています。場所によって、それぞれベストなタイミングがあるんです。
なので住み慣れた町を歩くときも、この状況が揃ったタイミングで写真を撮りに来ようとかってメモをしたりマップにピンをつけたりしています。
ただ真っ直ぐに撮るのではなく、いろんな角度からファインダーをのぞいて、自分の頭の中にあるイメージを実体を使って表現する。
そのためにもできるだけ写真からインスピレーションを受けることは避けていますね。写真を参考にしてしまったら、それと同じものに仕上がってしまうような気がして。
日常の一瞬を切り取りながら、みなさんと私の中にある非日常を共有したいと思っています。
[ GUEST ]
NAME : 岩倉 しおり
INSTAGRAM :@iwakurashiori
[ INTERVIEWER / WRITER ]
NAME:豊島七海
AREA : TOKYO
INSTAGRAM :@nn.m__